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タンパク質の摂取について

タンパク質というと、「筋肉」をイメージしやすく積極的に摂取している人もいますが、タンパク質については誤解も多いです。過剰摂取は身体のパフォーマンスに影響を与えることを知っておきたいです。

基本的な考え方

タンパク質は、筋肉の構成成分である以外に、酵素やホルモンの成分などにもなっています。タンパク質について知識を深めましょう。例えば、鶏肉のササミ100gの中にタンパク質は23g含まれます。筋肉=タンパク質とイメージするかもしれませんが、筋肉中にタンパク質は、20%程度しか含まれていません。また、筋肉中のタンパク質に含まれる必須アミノ酸の35%程度が運動中にエネルギー源として利用されることが多い「分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン:BCAA)」です。食物タンパク質の中では必須アミノ酸の約50%が分岐鎖アミノ酸です。

分岐鎖アミノ酸は、運動強度が高くなると分解促進の酵素が活性化され、エネルギー源としての利用量が増えます。また、運動時間が長くなると、減少した糖質を補うためにアミノ酸の一部分を使って糖質を作る(糖新生)ことから利用量が増加すると考えられています。タンパク質の体内での活躍の幅は多岐にわたっていますが、筋肉のように構成している体タンパク質以外に体内に蓄えておくことができる量は「アミノ酸プール(血液や各組織に存在する遊離アミノ酸)」にわずかにあるだけです。タンパク質は、運動量の増加や運動時間の延長に伴い、摂取量を増やすべき栄養素です

運動している人のタンパク質摂取

運動している人のとってのタンパク質摂取は、2つに分けて考えるとわかりやすいです。

1つは、「運動中にエネルギー源として使われたタンパク質のリカバリーのための摂取」。もう1つは「運動中の刺激に対して筋肉の合成(筋合成)をするために必要なタンパク質の摂取」です。この2つの考慮すべきことを研究結果に基づき整理して、体重1kgあたりに必要なタンパク質摂取量として示したのが下の表です。

身体活動状況体重1kgあたりのタンパク質摂取量(g)

軽度の運動をしている人

0.8~1.0

高齢期で軽度の運動をしている人1.0~1.2
中強度の運動をしている人1.0~1.5
高強度の運動をしている人1.5~2.0
持久系のトレーニングをしている人1.2~1.4
レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)をしている人1.6~1.7

リカバリーのためのタンパク質の摂取

通常、私たちはエネルギー源として糖質と脂質を使っています。しかし、前述しましたが、運動強度が高くなったり、運動時間が長くなったりすると、タンパク質が分解されます。つまりタンパク質が分解されない運動(トレーニング)は、運動強度が低くて、時間も短いということになります。パフォーマンスの向上を考えた場合には、分解なしに運動(トレーニング)することは難しいです。

タンパク質(分岐鎖アミノ酸)の分解には2つの影響があります。

1つは筋肉中の分岐鎖アミノ酸を利用するためには、骨格筋を分解しなければならないということです。骨格筋内の分岐鎖アミノ酸だけを抜き取ることはできず、分解する骨格筋は分岐鎖アミノ酸の必要量よりも大きくなるため、骨格筋のダメージは大きくなります。これは骨格筋の「抹消性疲労」の原因の1つと考えることができます。

筋肉中の分岐鎖アミノ酸の分解によるもう1つの影響は、分解されたそのほかのアミノ酸のゆくえに関わります。多くのアミノ酸は、遊離アミノ酸になるか、肝臓でさらに分解されて、さまざまな組織で使われます。しかし、必須アミノ酸の1つであるトリプトファンは、神経系の疲労である「中枢性疲労」の原因になると考えられています。

こうした影響があるために分岐鎖アミノ酸の分解は避けたいですが、パフォーマンスの向上を考えた場合には、全く分解なしに運動(トレーニング)することは難しいです。しかし、できるだけ筋肉中の分岐鎖アミノ酸の分解をしないようにすることは可能です。

1つの方法は、エネルギー源としての糖質の減少によっておこる分岐鎖アミノ酸からの糖新生を軽減させることです。その具体的な方法は、運動前から筋グリコーゲン量を多めにしておくこと、運動中に糖の摂取を続けることがあります。

それでも、糖新生で分岐鎖アミノ酸を分解してエネルギー源として使うことになった場合には、血中の分岐鎖アミノ酸濃度を運動前に高めておき運動中にも補給して下げないようにすることです。

これにより、運動中は血中からの分岐鎖アミノ酸を使うことで筋肉中の分岐鎖アミノ酸は使わず、骨格筋を分解しないですむか、あるいは分解量が少なくてすむことになります。そこで、運動前、運動中の糖質と分岐鎖アミノ酸の補給が重要となります。

ただし、長時間継続して運動する場合は、筋肉中の分岐鎖アミノ酸を使用する可能性が高いです。このため運動後は、分岐鎖アミノ酸を中心に補給することが必要となります。また、運動時間が長くなれば、分岐鎖アミノ酸以外のアミノ酸も、さまざまな組織で使われたり、分解されたりするため、運動の強度と時間に合わせてタンパク質の摂取量を多くしなければなりません。

研究結果から、タンパク質とともに糖質を補給することがダメージを受けた骨格筋の合成とグリコーゲンの再補充に効果的であり、できるだけ運動直後に補給することで回復が効果的に行われるとする報告もあります。そこで、練習や試合直後に糖質とともに分岐鎖アミノ酸を中心としたタンパク質を補給します。

運動前・中・後のタンパク質やアミノ酸の補給を考える際に、運動を始める前までに食事として食べた食物の消化・吸収は、すべて終わっていないことを頭に入れておかなければいけません。運動中には、消化・吸収途中の食べ物が胃腸に存在しています。運動が終われば、消化・吸収がまた始まります。

つまり、運動前・中・後にはタンパク質のとり過ぎにならないように、その分も考慮にいれて補給を考える必要があります。食事の量、内容、時間、運動を開始する時刻、運動時間など、さまざまな状況に応じて、糖質やタンパク質をはじめ、エネルギーや栄養素の摂取を考えたいです。

筋合成のためのタンパク質摂取

筋合成をビルの集合体として考えてみましょう。例えば、大胸筋を5階建てのビルの集合体と見立てたときに、トレーニングによって大胸筋に強い刺激を加えられたときに何が起こるのかをやってみましょう。強い刺激によってビルの屋根が破壊されます(筋肉痛になります)。しかし雨漏りすると困るので、タンパク質が入ったペンキを塗って修復します。乾くまでに2~3日かかります(筋肉痛が治ります)。

そして再び刺激を加えるとまた屋根が壊れるので、ペンキを塗って修復します。乾いたらまた刺激を加えるというサイクルを1年くらい繰り返すと、ペンキの厚みが増して、5階建てだったビルは6階建てへと変わります。この現象が「筋肥大」です。また、ビルの屋根を壊した経験が少ない人のほうが、破壊が大きくなるとされているので、初心者が練習を始めると筋肉のつき具合が鍛錬者に比べてよいと感じることがあるはずです。

このビルのイメージを理解してくると、タンパク質をいっぱい摂取しても、その分、筋肉が大きくなるわけではない、つまり必要以上にタンパク質を摂取しても意味がないことがわかると思います。また、屋根が壊れたらすぐにペンキを塗る状況になっていた方が早く修復します。つまり、特にレジスタンスレーニング(筋力トレーニング)をしている人はリカバリーに必要な栄養素を運動直後にとることで、運動後の筋合成が高まることもわかってくるはずです。

さらにレジスタンストレーニング後、ペンキを塗って乾く時間を考えると、48時間以降もタンパク質代謝が亢進することも理解いただけると思います。

そこで、トレーニング後のタンパク質の摂取は、トレーニング直後に限定するのではなく、1日を通して体内のタンパク質の利用に応じて行う必要があります。また、インスリンの作用により、糖質の分解が軽減されることからタンパク質だけでなく、筋肉のために糖質を摂取することも考える必要があります。

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