「糖質やタンパク質は十分にとるべきだが、脂質は控えるべき」というイメージを持っている人は少なくありません。しかし、脂質には生きるために必要な栄養素としての役割があるだけではなく、とり入れ方によっては、有効活用できる栄養素でもあります。
糖質は1gで9kcalとなり、効率よくエネルギーを摂取することができるすぐれものです。また、細胞膜の構成成分であるなど、脂質の役割は多岐にわたり、身体には欠かせない栄養素の1つです。
高脂質食や断食など糖質の少ない食事を続けたからといって、その分、脂質がエネルギー源として利用されるわけではありません。運動強度が低・中強度の場合には、運動量に比例してエネルギー源として脂質が使われることになります。高強度になると、酸素の摂取が妨げられるため、糖質を使ったエネルギー代謝となり脂質の利用は抑制されます。このため、糖質が少ない高脂肪食はパフォーマンスを損なうことになります。そこで、食事は糖質の必要量を摂取できるようにしたうえで、脂質を活用した無理なく食べきることのできる献立にしたいです。
油の質にも注目してもらいたいです。以前から、飽和脂肪酸(動物性の油脂、パーム油など)を少なくして、必須脂肪酸を中心とする不飽和脂肪酸(魚や植物性の油)の割合を多くして摂取する方がよいと言われています。生活習慣病の観点からもこの考えは変わりません。
しかし、分類上は不飽和脂肪酸になりますが、トランス脂肪酸には注意したいです。一定量以上摂取することで、虚血性心疾患のリスクを高めるとして、2003年にWHO(世界保健機関)とFAO(世界食糧農業機関)が共同で「集団としてのトランス脂肪酸の摂取量として総摂取エネルギー量の1%未満」との勧告を発表しています。この勧告以降、日本でも菓子メーカーやファストフード店などがトランス脂肪酸を減らす努力をしています。
最近は、特別な機能を持ったオイルを料理やドリンクにかけてとることもトレンドです。例えば、オリーブ油、亜麻仁油、ゴマ油、中鎖脂肪酸油などです。運動前の大量摂取やエネルギーの過剰を引き起こさないのであれば、これらの油を積極的に摂取するといいです。