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60歳以上で運動量の多い人

60歳以上で生涯現役を目指すためには?

ここでは趣味や健康維持・増進のために運動量が多い人について説明していきます。

加齢に伴う身体の変化を受け入れ、対応する

シニア(60歳以上)の栄養管理を考えるポイントは2つあります。1つは加齢に伴う変化に対応すること、2つ目は”衰え”だけではなく、疾病の予防・治療(改善)へのとり組みです。

加齢とともに身体は変化します。加齢による変化は、骨格筋量の減少だけではなく、ありとあらゆる組織や器官などに起こります。運動している人であっても、その変化を受け入れなくてはなりません。加齢とともにさまざまな記録が落ちていくと同じように、身体も全体的に機能低下をしていきます。栄養・食の観点では、加齢により、消化器系の機能が低下します。具体的には下記のようなことです。

口の中:歯の状態が悪いと咀嚼機能(かみ砕く能力)が低下します。唾液の分泌も少なくなり、唾液による糖質の消化も低下します。また、食べたものと唾液の混ざり具合が悪く、スムーズに飲み込める柔らかさにできなくなります。さらに、飲み込むタイミングが合わなくなり(嚥下機能の低下)、むせることが多くなります。

胃腸:消化管の運動機能と消化液の分泌機能の低下により消化能力が落ちます。また、消化がうまくいかないと吸収率も落ちます。

大腸:運動機能が低下することで、下痢や便秘を引き起こしやすくします。

上記に加えて、吸収されたあと体内での様々な代謝機能も落ちます。

一般的に、高齢期に入ると、身体が小さくなり、身体活動量が少なくなることから、食べる量が少なくなったり、少なくしなくてはいけないと考えたりします。しかし、高齢者であっても食べる量に差ほど違いが出るわけではないです。一見その量を食べることができるのかと思う高齢者の方でも一人前を普通に完食していたりします。これは消化吸収の能力が落ちる分、食べて補っていると考えることができます。若い時の吸収率を100%とすると、加齢で消化が悪くなり吸収率が80%に落ちた場合に、エネルギーや栄養素を使う量も若い時の80%であれば今まで通り食べればよいということになります。もしも使う量が70%であったら、若いときよりも食べる量が少なくなることになります。消化吸収の能力が低下するために、食事からでは必要量の摂取が難しい場合には、サプリメントなどを利用して補うこともできます。ただし、過剰摂取は避け、適正量の摂取にとどめなければなりません。サプリメントではなく、健康食品のようなものを食べている場合には、栄養素レベルで考えたときに、過剰摂取となる可能性があることを知っておいていただきたいです。また、サプリメントや健康食品をとる場合には、自分自身の身体で考えて、その必要性と量を決めてほしいと思います。

体格が小さくなることによって、エネルギーや栄養素の必要量はどう変わるのか。同じ動きであっても体重が軽い方がエネルギーはかからないことから糖質や脂質の摂取量は少なくなり、タンパク質も体重当たりで考えるので少なくなります。ビタミンとミネラルも代謝が下がれば使う量も少なくなります。ということで全体的に必要量が少なくなります。

「サルコペニア」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。サルコペニアは、加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下として定義されています。サルコペニアになると筋肉量が減少して、骨粗鬆症のリスクが増すことから介護が必要になる可能性が高くなります。原因は、身体の活動量、ホルモン分泌、エネルギーやタンパク質摂取量の減少などによるタンパク質合成の低下と、炎症反応の増加によるタンパク質分解の促進といわれています。予防するには、運動面では有酸素運動でインスリン抵抗性を改善し、レジスタンス運動(いわゆる筋力トレーニング)で筋量を維持・増加すること、栄養面ではエネルギー不足にならないようにすることと十分にタンパク質を摂取することがあげられます。運動面と栄養面を両輪で考えなくてはいけません。運動量の多い人は、運動面での問題はないかもしれませんが、運動に見合った栄養摂取ができていなかったり、エネルギー不足のまま体重を維持していたりすると、サルコペニアの可能性が出てくるので、注意が必要です。

栄養管理は、体格、身体の活動量、消化吸収の状態を総合的に評価して、進めていきます。加齢に伴う身体の変化は個人差が大きく、それぞれの状況に合わせた栄養管理が必要です。

個人の状態に合わせて疾病を予防・改善しよう

疾病の予防・治療(改善)へのとり組みは、疾病の種類ごとに考えなくてはいけません。身体の活動量は、量反応関係といって、身体の活動量が多くなるにしたがって、さまざまな疾病や認知症などのリスクが低下するといわれています。運動量の多い人は、運動すること自体には問題がないと考えます。ただし、運動しすぎによる整形外科的な疾患やエネルギー不足には注意が必要です。また、休養のとり方が少ない場合も、故障の原因になったり、疾病を引き起こしたりする可能性が出てきます。年相応に、体力を低下させない運動量と休息のとり方を追求し続ける必要があります。

栄養面からは、食生活を見直すことによって、疾病の予防効果を高めたり、改善したりしますが、この見直しを図る際には、正しい情報を参考にしてもらいたいです。食生活を極端に変更させれば、よいことも起こるのかもしれませんが、そのしわ寄せとして悪いことも起こる可能性が高くなります。例えば、野菜は身体にいいと聞いたので、食事の2/3を野菜にすると、副菜は十分に食べることができますが、その他の主食や主菜が少なくなり、エネルギー不足と低栄養状態となります。また、食物繊維の過剰摂取となり消化が落ち、吸収率が低下し、ますます低栄養状態を引き起こすかもしれないです。情報の精査をしてその活用の方法を間違えず、個人の状態に合わせて疾病予防をする、あるいは、疾病とうまく付き合ってほしいです。自分の身体と会話をして、質の高いセルフマネジメントを実行し、「生涯現役!」を続けていきましょう。

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